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顧客はなぜ自分のニーズがわからないのか

前回、商品サービスと顧客との接点において、顧客が価値を感じ「買おう」と思うには、顧客の生活上の文脈が重要であると書きました。顧客はある文脈の中である活動をしていることにより何らかの課題に直面します。それを解決すべく適切な商品サービスを欲しいと思うわけです。言い換えれば、顧客の「ニーズ」は顧客文脈から生まれる。今回はそこをさらに深掘りしたいと思います。

■顧客も言語化できない「ニーズ」

顧客ニーズという言葉は、いまでもよく使われています。ですが、以前ほど有効じゃなくなってきているというのも事実です。なぜかと言えば、顧客が言語化できるニーズ(つまり、「こうしてほしいんです!」とはっきり言えるニーズ)は表層的で、ここからは既存の改善やコモディティ化の延長しか出てこないからということがあります。顧客も言語化できないニーズからこそ、顧客が「おっ、これすごい!」と感動するような商品サービスが生まれてくるわけです。というのも、顧客が「おっ、これすごい!」と驚くということは、顧客も気づいていなかったということだからです。

■ニーズは意識や記憶ではとらえきれない

では、なぜ顧客は自分のニーズなのに、気づいていない、ないし言語化できないといったことが起こるのでしょうか。まず言えるのは、行動は人間の意識ではとらえきれないということがあります。たとえば、カードや電子マネーでした買い物について、アプリとかで明細を見てはじめて「へぇ、こんなに買ってたんだ」と気づくことがしばしばあります。自分の行動なのに、意識や記憶で追うのには限界があるのです。なので本当のニーズは自分でもわかっていないということが起こります。

■「ニーズ」は日々の膨大な活動の中で眠っている

さらに言えるのは、ニーズは顧客の日々の膨大な活動のごく部分的なアウトプットにすぎないということがあります。たとえば、クルマを買い、所有し、通勤したり、家族でドライブしたり色々する中で、さまざまなことを感じたり思ったりしているはずです。その中でニーズとしては、ごくごく一部の思いが「燃費が悪い」といった形で出てくるにすぎません。多くは言語化されないまま眠っているのです。けれど、その眠っているものの中に実は重要な願いや思いがあるかもしれず、それを掘り起こしてくれるような商品サービスに出会ったとき、「おっ、これすごい!」となるわけです。

とすれば、ポイントは日々の膨大な活動ということになります。そこを見なければ、顧客の「ニーズ」はわからないわけです。この顧客活動を注視するとき、顧客も気づいていない「ニーズ」にたどり着く可能性が生まれてくるのです。ですが、ここでさらに深堀する必要があります。なぜなら、顧客活動の前提にはその顧客固有の文脈があるからです。

■行動(活動)からも「ニーズ」はわからない

たとえば、小さな子供を連れて外出したとします。初めはおとなしくしていたのに、急にむずかり出します。なだめたいのだが、なかなかおさまりません。ところが、たまたま近くにハンバーガーショップがあったので、ハンバー好きの子供のこと、店に入って、ハンバーガーを食べさせます。すると、機嫌が直り、やれやれと一息。

さて、この家族がとった行動(活動)は何か。ハンバーガーショップに入って子供にハンバーガーを食べさせることです。ですが、この行動(活動)から「ニーズ」を読み取れるでしょうか。たとえば、ハンバーガーショップの店員さんは「うちのハンバーガーがおいしいから来てくれたんだ」と思っているかもしれません。でも、違います。子供をなだめるために入ったのであって、ハンバーガーの味は何の関係もありません。子供をなだめたい、それが「ニーズ」だったのです。店員さんは知る由もないわです。では、この「ニーズ」はどのようにして生まれたのか。

■文脈から課題が生まれ「ニーズ」が生まれる

ここで注視しなければならないのが文脈なのです。家族は楽しく外出していました。楽しい外出、それが当初の文脈です。ところが、この文脈が、子供がむずかるという文脈が変わります。楽しい外出という文脈はいったん中断されるわけです。この文脈の変化により、子供をなだめねばならないという課題が生まれ、課題解決を迫られることになる。で、近くにハンバーガーショップを見つけ、あくまで子供をなだめるという「ニーズ」のために店に入るわけです。ハンバーガーがおいしいかまずいかはここでは関係ありません。

【結論】顧客文脈を想定することこそが「ニーズ」を把握する鍵

このように「ニーズ」は行動(活動)だけではなく、さらに文脈から出てくるわけです。なので文脈を注視することが何より重要になります。自分たちの商品サービスにかかわるとき、顧客はどんな文脈に身を置いているのか。その文脈でどのような課題が発生しているのか。その課題解決の何に役立つからこの商品サービスを欲しいと思うのか。そうしたことが重要になるわけです。もちろん、あらゆる顧客文脈をすべて掴むことなどできないでしょう。ですが、主だった文脈は想定してみる必要があります。このような想定を繰り返すことにより、顧客が自分でも気づかないうちに本当に望んでいることが見えてくるのではないでしょうか。そして、そのとき顧客が「おっ、これすごい!」と感動するような商品サービスを生み出せる可能性が出てくるのではないでしょうか。

 

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