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顧客も活動する、製品も活動する

商品は販売店に陳列されているだけでは何ら価値を生み出していない。顧客の手に渡り、使われ出したその瞬間から価値を生み始める、と繰り返し言ってきました。だから顧客を体験レベルで知ることが何より重要になるわけです。でも、体験レベルで知るとはどういうことなのか。今回はこの点をさらに掘り下げてみたいと思います。

■POSレジ情報ではわからない顧客の文脈

まず、顧客が身を置いている文脈というものを考えてみたいと思います。たとえば、コンビニで入浴剤が売れたとします。POSレジ的には入浴剤の販売個数、売上高等がわかります。さらに、雨の日であったとか、時間帯とか、20代の女性であったとか、そうしたデータも一緒に紐づくでしょう。ですが、そこからは顧客体験というものが全く見えない。確かに買った人は20代の女性であったかもしれません。では、なぜ彼女は入浴剤を買ったのか。ひょっとして仕事で疲れていたのかもしれません。ふとコンビニに寄って、この入浴剤で疲れをいやそうと思ったかもしれません。ふだんはシャワーだったりするので、「ああ疲れた」と思う日だけコンビニに寄って入浴剤を買うのかもしれません。

■2つの文脈の出会いによって生まれる価値

ここに顧客の文脈があり、この文脈の中でのみ商品サービスは商品サービスになります。この例でポイントになるのは、コンビニが入浴剤を置いているということでしょう。毎日ふつうに入浴剤を使う人なら、コンビニじゃなくてスーパーとかドラッグストアでまとめ買いするでしょう。コンビニで買うのは「今日は入浴剤」という気分になる顧客がいるからと考えられます。ふだんはいらないが、今日は欲しい。とすれば、まとめ買いする意味はなく、欲しいときに帰り道で買えることが重要になるのです。

つまり、その人が仕事で疲れて、「今日は入浴剤」という気分になるという文脈があり、他方でコンビニがそれを置いているという文脈がある。この2つの文脈がバッチリ合ったとき、入浴剤はその人にとってはじめて「商品」となるのです。さらに言えば、その入浴剤が実際に使われ、その人の疲れをいやしたとき、その入浴剤ははじめて価値を生むのです。

■見えない顧客の文脈

顧客は生活をしています。働いたり、家の用事をしたり、近所づきあいをしたり、遊びに行ったり、いろいろな活動をしています。その活動が織りなすもの、それが文脈です。顧客は必ず何らかの文脈に身を置き、そこで何らかの活動をしているわけです。これがすべての前提です。そして、一般的に言えば、わかり切った文脈、ありふれた活動にかかわるような商品サービスは、今日すでに飽和状態です。競争力を持ちません。なので、よく見えない文脈、顧客自身もうまく言語化できないような活動にまで深く分け入っていく必要があります。そうした顧客の見えない文脈に商品サービスがうまく行き当たったとき、「あっ、こんなものがあるんだ! 買おう!」となるわけです。

【結論】顧客の活動と文脈をいかに想定しきるか

こうした文脈に行きあたらなければ、商品サービスは永遠に価値を生むことはないでしょう。入浴剤であれば、お湯に溶け込んで、五感に作用しながら入浴する人の疲れをいやすのがいわばその「サービス」活動です。顧客が仕事で疲れコンビニに寄って入浴剤を買いお風呂に入れるという行動と、入浴剤がお湯に溶け疲れをいやすという活動が接触するとき、そこに価値が生まれる。ここが顧客接点なのであり、この接点を創ったのがコンビニなのです。コンビニの狭い棚に何を置くかは常に悩ましいところではないでしょうか。しかし、商品候補がたくさんある中で、入浴剤を置こうと判断した人がいるはずです。その人は、なぜ顧客は他でも買える入浴剤をコンビニで買うのか、どんな生活をしている人なのか、どんな文脈で入浴剤を欲しいと思うのか、そうした顧客の日常の行動と文脈をあれこれ想定したんじゃないでしょうか。そうした想定をやりきることこそが商品サービスの価値を引き出すことを可能にするんだと思います。

 

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