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顧客のことはわかっているはず

前回はアフターデジタルにおける顧客接点について考えましたが、今回は再びリアルな顧客接点について考えてみたいと思います。商品サービスの価値は顧客接点においてはじめて生まれるというのがここまで見てきたことでした。とすれば、顧客接点の質が商品サービスの品質に直結します。顧客接点の質を上げることが、何より重要になるわけです。では、どのようにして顧客接点の質を上げていけばいいのか。それが、今回のテーマです。

■顧客を知るとは?

当たり前ですが、顧客接点の質を高めようと思えば、顧客を知ることが必須になります。「顧客ニーズの把握」と言われるものですが、これは常に難しい課題です。市場調査をしたり、グループインタビューをしたりと、いろいろな方法が駆使されます。しかし、ここで立ち止まって考える必要があります。顧客を知るとは、顧客をどのように知ることなのでしょうか? 統計数値として顧客を知ることでしょうか? 属性として顧客を知ることでしょうか? 一部の声の大きい顧客を知ることでしょうか? ここを考えておかないと、顧客接点の質を高める方向で顧客を知ることにはならない可能性があります。

■知るべきは顧客体験の当事者としての顧客

顧客接点における顧客とは、要するに顧客体験の当事者としての顧客です。接点において何かを体験している顧客。喜んだり、気持ちよく思ったり、不快に思ったり、期待したり、失望したり、意欲を持ったり、やる気をなくしたり、幸せになったりする顧客です。こういう顧客こそが、顧客接点における顧客です。とすれば、まず統計数値に還元してしまうことはムリがあるということは直観的にわかるでしょう。また、男性女性、年齢、年収といった属性に紐づけることも根拠があるようには思われません。ある接点において男性だからといって、特定の体験の質を導き出すことは難しいでしょう。では、どうやれば体験レベルの顧客を知ることができるのか。

■知ろうとする側も「体験レベル」に立つ

まず言えることは、知ろうとしている側も同じように「体験レベル」に立つ必要があるということです。単に「統計分析をしてやろう」などと思っているだけでは、顧客の体験は全く見えてこないでしょう。知ろうとしている側も人間なのです。人間である以上、その人も一消費者のはずです。なら、商品サービスに接して喜んだり、がっかりしたり、楽しんだりといった体験を必ずしているはずです。そこに立つ。それによって顧客の体験を共感レベルで推察できるようになります。「顧客接点でこういうサービスをすれば顧客はどう思うだろう」、「こういう商品を提供すればどう感じるだろう」といったことが皆目わからないということは、原理的にあり得ません。正解を射当てられるかどうかはともかくとしても、何らかの答えを出すことはできるはずなのです。自ら「体験レベル」に立つことによって、顧客を「体験レベル」で知ることができる可能性が開けてくるわけです。

■顧客のことを知っていても言語化されない

さらにもう一つ重要なことがあります。完成品メーカーのように販売を自社でやらない業態は別かもしれませんが、多くの企業は直接顧客接点を持っているはずです。つまり、社内に実際に顧客と接している従業員がいるわけです。これらの従業員は当然顧客を「知って」います。接しているのですから。しかし、この「知っている」には注意が必要です。なぜなら、それはホンネベースだからです。たとえば、会社一押しの新商品があるとします。営業はその話をするのですが、顧客は何かノってこない。何度か話したがやっぱり食いつきが悪い。でも、社内的にはイケイケ状態なので、とても食いつきが悪いとは言えない。お前の売り方が悪いと言われるだけだ。となれば、誰も本当の顧客の反応については話さないでしょう。こうして顧客接点において知られたことは意識の下に消えていきます。こうしたことは無数にある可能性があります。

■隠れた知見を聞き取る

顧客のことがよくわからないと思う会社は、顧客接点を持っている自社の従業員から徹底的に聞きとるべきだと思います。それも、意識の下に隠れたようなことを気兼ねも制約もなく話してもらうことです。それがたとえ意外なものであったとしても、その意外さこそが発見であり、顧客についての真の知見である可能性があるのです。

【結論】実は顧客のことをよく知っている

私たちは実は顧客のことを知っている。これが出発点でしょう。顧客のことがよくわからないから何とかして調べるのではありません。知っているのだがうまく言語化できていないので、それを何とかして引き出すのです。同じ人間です。共感レベルでは推察できるはずです。顧客がノってこないとき、「たぶんこう感じているんだろうな」とわかるのではないでしょうか。チンプンカンプン全くわからないということの方が少ないんじゃないでしょうか。しかし、瞬間感じたその共感は放っておけば、言語化されず消えていく。ここを言語化していくことが顧客を知り、顧客接点の質を高めていくことになるのだと思います。

 

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