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デジタル世界に取り込まれる顧客接点

前回、企業のプロセスはすべて顧客接点を基点に組み立てられねばならないということを書きました。なにせ、商品サービスに接して顧客が「これはいい!」と思い、買ってくれるのでなければ、売上も利益も上がりません。この顧客と接触する瞬間にこそ、企業のすべて命運がかかっているわけです。なので、顧客接点をすべての起点にして企業の仕組みを構築していかねばならないのです。しかし、ここで一つ注目しておくべきことがあります。それはデジタル化です。今日の顧客接点においてデジタル化は必須になってきています。今日はこれがテーマです。

■人もモノもネットに常時接続

ビフォアデジタルとアフターデジタルという言葉が最近聞かれます。デジタル以前、デジタル以後とでも訳すのでしょうか。ビフォアデジタルとは従来型の世界で、まずオフラインのリアル世界があって、時折オンラインを便利に使うという状況を指しています。それに対して、アフターデジタルでは、それが逆転します。いまや人もモノもつねにオンライン状態です。モノは直接ネットワークでつながり、人もスマホを通してネットに接続し続けています。人と人、人とECサイト、人とECサイトとリアル店舗、人と企業、などなど、人がネットに常時接続することによって、常にさまざまなつながりが生じ続けています。初期状態がオンラインなのです。

■リアル接点がむしろ希少価値を持つ

そんな世界では、オフラインの純粋なリアル世界がむしろ希少なものとして重要な意味を持ち始めます。以前なら、ふだんはお店に行くが、時たまネットで買うという感じだったのが、いつもはネットで買うが、これぞという服だけお店に出向いて店員とあれこれしゃべって選ぶといった形になります。ここで顧客の心を捉まえられるかは、従来よりはるかに重要な意味を持ちます。たまの直接的なコミュニケーションを最大限に生かすことによって、ネットでの関係も安定したものになりますし、ネットでの服の選択や購入もより充実したもになるでしょう。逆に、ネットでの関係構築を丁寧に行うことにより、リアル接点をより充実したものにもできるでしょう。

■ネットとリアルの総合的な連鎖

こうした関係は、さらに顧客体験の連鎖を生み出すことができます。たとえば医療に例をとると、スマホアプリでまず診察予約を行ない、当日待ち時間なく診察を受ける。診察後の支払い、薬の購入も同じアプリで自動決済。他病院への紹介が必要になったときも、紹介状の送付や予約が同じアプリで行われ、カルテや画像もデータで転送される。その後、症状に少し不安が出たときなどの診療相談や 健康指導などのサービスもアプリを通して受けられる。こうして必要な医療サービスを、オンラインを前提としながら、ポイントはオフラインでつなげていくことにより、総合的な流れとして受けることができるようになるわけです。なお、ここでアプリと言っているのは、もちろん、一つのアプリではなく、複数のアプリの連携や、共通のオープンプラットフォームでいいわけです。

■ネットとリアルを繋げていく顧客接点設計

こうなってくると顧客接点の設計は従来とは全く違うものになってきます。たとえばオムニチャンネルであれば、買うことが中心になります。ECサイトでも、実店舗Aでも、実店舗Bでも、コンビニでも、チャネルを全く意識することなく欲しいときに欲しいものが手に入る感じで、購入にだけ的を絞る。しかし、ビフォアデジタルでは設計上すべての顧客接点を考慮する必要があります。初めて知ってもらうところから商品サービスの活用が完全に終わるところまで、すべてを考慮し、しかも顧客の常時ネット接続を前提としながら、有効なリアル接点を見出し、ネットとリアルを最も効果的に繋げていく。そうした全顧客体験におけるネットとリアルのもっとも有効な接続が不可欠になるのです。

【結論】顧客接点の繋がり全体が商品サービスそのもの

ですが、こうして見てみると、顧客接点について根底にある考え方は何も変わらないことがわかります。商品サービスの価値は顧客接点において初めて生まれるということには何の違いもない。ネットであれ、リアルであれ、そこに顧客接点があるなら、それは商品サービスが価値を生むチャンスなのです。もちろんネットで生む価値とリアルで生む価値とは違う。さらに同じネットやリアルでも、場面場面によっても異なってくるでしょう。こうした価値をどう繋げていくかが鍵にやなります。そして何より重要な認識は、こうした価値の連鎖全体がその商品サービスの価値だということなのです。いまや商品サービスを単体で捉えることはできません。顧客接点の繋がりの全体が商品サービスそのものなのです。

 

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