代表コラム 代表コラム
代表コラム

商品はいつ商品になるのか

サービスを考える上でまず重要なのは、そもそも商品って何?ということでしょう。あるいは、商品はいつ商品になるのか?と言った方がいいかもしれません。サービスはそもそも形がないので(商品がモノであっても、サービスのうちの一要素に過ぎないと考えます)、いつどんな形で商品が現れるのか、よくわからないのです。今回はそのことを書いてみたいと思います。

■家で映画を堪能したいので60インチのテレビを買う。。。

前回テレビの例を出しましたが、今回もそれでいこうと思います。映画好きの人がいるとします。もちろん映画館に足繁く通っているのですが、やっぱり家でも映画を堪能したい。そこでまず思い浮かぶのが大画面のテレビ。臨場感を得るには60インチとかのテレビが欲しいわけです。で、量販店に行ってテレビという商品を買う。それで完了。。。果たしてそうでしょうか?

まず、ネット環境がいります。Netflixにしろ何にしろ、いまどきネット環境なしでは好きなときに好きな映画を観るのは難しい。もちろんネット環境ぐらいあるでしょうが、画面が乱れて映画が台無しになるのは避けたいでしょうから、ルーターが古いので性能のいいものに変えるとか、より速い通信業者にするとか、対策は必要でしょう。

それから、やはり、スピーカーシステム。できるだけ映画館の臨場感が欲しいなら、迫力あるスピーカーシステムが必要です。音質や音の広がりなど、望む音空間とのマッチングを考えて選ぶ必要があります。

さらに凝るなら、椅子。ゆったりリラックスできることや画面を見る角度、何人で見るかなど、要件を満たすにはどんな椅子がいいかを考えて適切なものを選択しなければなりません。

もっと言うなら、室内環境。まず、スピーカーシステムを良いものにするなら部屋の防音は欲しいところ。簡易でもいいのでなるべく音が漏れないようにする必要があります。すると、閉め切ることが多くなるでしょうから、空調や空気清浄機なども良いものに整える必要が出てきます。

■テレビが欲しんじゃない、映画を観る体験が欲しい

さて、もうお分かりかと思いますが、この映画好きの人は、テレビが欲しいんじゃないんです。家で思いっきり映画を見て楽しく幸せな時を過ごすという、この体験が欲しいんです。この体験にお金を払うのであって、単なるテレビにお金を払うのではないのです。テレビはこの体験のための単なる一構成要素にすぎません。このテレビにかりに40万円払ったとして、その40万円に対する便益はいつ手に入るのかが、ポイントです。なぜなら、商取引は売り手と買い手がお金と便益を交換して初めて成り立つのであり、この便益が提供されて初めてそれは「商品」として成立したことになるからです。この場合、40万円はあくまで先払いです。40万円を支払っただけでは、まだ「商品」は手に入っていません。では、この「商品」はいつ手に入るのでしょう?

言うまでもなく、家で映画を味わうその瞬間に手に入るのです。家で映画を見る至福の時を過ごしながら、「ああ、このテレビを買ってよかった」と思った瞬間に、その人は40万円に値する便益を受け取っているのであり、なので商取引が成立しているわけです。

■体験においてはじめて「商品」になる

これはテレビだけではありません。ネット環境も椅子も室内環境もすべてこの瞬間に「これを買ってよかった」となるわけです。つまり、すべて家で映画を味わう体験の一つの要素にすぎません。それらの要素が結びつき、連携して、家で映画を味わう至福の体験を生み出した瞬間に、それらの商品の便益提供が達成され、それらは晴れて本来の商品となるわけです。

■家で映画を観る至福の体験を売ることこそがビジネス

そう考えると、ビジネスが変わることがわかるのではないでしょうか。テレビだけ売っても仕方がない。スピーカーシステムだけ売っても仕方がない。楽チンな椅子だけ売っても仕方がない。なぜなら、顧客が買いたいのは、家で映画を味わう至福の体験だからです。その体験こそが「商品」なのであり、顧客はその「商品」にのみお金を払うからです。つまり、ここで売り買いされているのは「サービス」であり、それを売ることこそがビジネスになるのです。

【結論】サービスが実行されてはじめて商品が現れる

商品が「サービス」である以上、実際サービスが実行されるまでそれは影も形もありません。実行されて初めて目の前に現れるわけです。そして、現れて初めてそれは商品として認知可能になる。これはたとえテレビであったとしても、それがいったん「サービス」に一要素として組み込まれたら当てはまることなのです。