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【2019年11月14日放送】[ウエルカム(ディーン&デルーカ)]逸品ぞろいで女性が熱狂!「食のセレクトショップ」大解剖!

小売りって、できた商品を売るだけ、と何となく思っていたんですが、まったくそうじゃないようです。確かにプライベートブランドを除いて、出来上がった商品を仕入れて売るだけには違いありません。しかし、何をどう売るかによってイノベーションが起きる。知る人ぞ知る(私は知らなかったのですが)ディーン&デルーカはそのことを示しています。モノをつくっているわけでもないのに、仕入れて売るだけなのに、なぜそれがイノベーションになるのか? それが今回のテーマです。

■店には入ってもらえるが、買ってもらえない

代表の横川正紀さんは1972年にすかいらーく創業家に生まれましたが、すかいらーくは経営者の家族血縁は入社させないという方針があり、それもあって2000年に現在のウエルカムを設立。アメリカのインテリア品などを扱う店を始めます。そして、2002年にアメリカにあるディーン&デルーカを日本でやってみないかという話が舞い込みます。ディーン&デルーカは、ディーンとデルーカの2人が1977年に立ち上げた輸入食材などを売る店。2人のルーツはイタリアで、イタリアのおいしい食材をアメリカ人に伝えたかったというのが始まりです。

横川さんはさっそくニューヨークのディーン&デルーカを見に行きます。「料理をしない自分でも料理をしたくなるワクワクするこの食材店は何なんだ」と感じ入ったんだそうです。これが日本にあったらきっと喜んでもらえると直感し、2003年にライセンス契約、オープン。話題にもなってお客さんで盛況になります。ところが、お客さんは入るのだが、売上が上がらない。つまり、店には入ってもらえるが、買ってもらえないのです。

■ニューヨークそのままじゃなく、そばを置け

悩んだ横川さんはデルーカさんのところまで相談に行きました。そのときのデルーカさんのアドバイスが「そばを置け」でした。どういうことか? そもそも横川さんはニューヨークでディーン&デルーカにほれ込んだ。だから、ニューヨークをそのまま日本に持ち込むべきと思い込んだ。ニューヨークで売っていた食材をそのまま売り、ポップまで英語にした。それこそが王道なのだと思っていたわけです。いまから思えば「お客に「何を買ったらいいのか」「何をこの店はしたいのか」「何屋なのか」がうまく伝わっていなかった」。面白そうなので入ってはみたが、一体何を売っているのか、何を買ったらいいのか、顧客はさっぱりわからなかったわけです。顧客が「これは欲しい!」「こんなものが欲しかった!」と思うものがなかったら、確かに何も売れないのは道理です。

だから「そばを置け」となるのです。そもそもディーンとデルーカは、父親がイタリアからアメリカに移住してきたイタリア系の人々です。たぶん、子供のころからイタリアの食材に親しんできたんだと思います。それをどうしてもアメリカの人たちに食べてほしかった。そういう思いから始めたディーン&デルーカ。日本にはそばのようなおいしいものがあるじゃないか。なぜ、それを置かないのか? これが問いかけのポイントだった。

そもそも、横川さんがデルーカさんのところに相談に行こうと思ったのも、ディーンとデルーカがどんな状況で、どんな思いで、どんなこだわりを持って始めたかを知りたかったからでした。原点に立ち返ろうとしたのです。「そば」はその原点の象徴だったでしょう。横川さんはデルーカにそう言われたとき、ぐうの音も出なかったそうです。

■「こだわり」こそが価値を生む

そこで日本の食材だけを集めた棚を作った。ですが、実はここからがポイントです。顧客のニーズにあった食材をそろえた、と言いたいところですが、実はそうではないのです。キーワードは「こだわり」です。お客さんのニーズに合いそうなものを右から左に流すのではなく、その間で、徹底的に自分たちの「こだわり」のフィルターにかける。そして、ここから付加価値が生まれるのです。

「こだわり」は偏りです。あまり偏ることを一般には良しとしません。まんべんなく円満なのものが喜ばれる傾向があります。しかし、新しい価値は「こだわり」という偏りからしか生まれないのではないか。偏ること、徹底的に偏ること、それが凝縮された高い価値を生むのではないか。そう思います。徹底的な「こだわり」こそが店を変える。ディーンとデルーカもイタリア系として創業時に「こだわり」があったはず。だから、ニューヨークで人気店になった。日本のディーン&デルーカを支えているのも、おそらくこの「こだわり」なのだと思います。

そこで、日本の食材もこだわった。京都の創業100年以上の老舗のものなど、これはというものを集めた。また、輸入物も日本向けにこだわって現地の製造者と協力してプライベートブランドを作った。こうして、売上は順調に伸び始めたのです。

■自分たちで価値を創り、顧客はそれに感銘を受ける

この「こだわり」について、横川さんは言います。「ディーン&デルーカは百貨店でもなく、一貨店(専門店)でもなく、しっかりとセレクトされた十貨店です。「これも」ではなく、「これは」という商品を集める」。バイヤーは7人。この7人で世界中を駆け回って商品を発掘してくる。そして、7人で会議し、試食し、判断する。が、美味しいだけではダメなんだそうです。バイヤーが持ってきたものは美味しいに決まっている。さらにその商品のストーリーや作り手の気持ちなど、そうしたものをひっくるめて店に出すかどうか決めるんだそうです。

もちろん、食材探しは大変です。しかし、紹介が多いとのこと。どういうことかと言うと、素晴らしいものを作っている人の友達はやはり素晴らしいものを作っている。こういう友達がいるんだが行ってみないか、と紹介される。このコミュニティに入り込んでいくことがバイヤーにとって一番重要なことなんだそうです。「こだわり」のある人々のコミュニティに「こだわり」のあるバイヤーが入り込んでいくわけです。こうして顧客に素晴らしいものを届けられる。単に顧客のニーズに応えるのではなく、自分たちが「これはとても素晴らしい食材です」と提案する。自分たち主導で価値を創っていく。顧客はそれに感銘を受ける。それこそがイノベーションの源でしょう。

【結論】「こだわり」が他にない店を創り、イノベーションを起こす

こうしてパンを極上のスイーツに変えてしまうピスタチオクリームやトリュフの香り漂うブラックトリュフソルトなどの食材が顧客の心を強くとらえるのです。横川さんは「現場にいる一人一人の感性が広がる店でありたい」と言います。本社から「これを売れ」というのではなく、現場の一人一人の「こだわり」が店の土台を、品ぞろえを、空気感を創り、他にはない小売店になる。こうして小売りがイノベーションを起こすのだと思います。

 

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