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【2019年10月31日放送】[天童木工]一流デザイナーが絶賛する技術力!ファンが熱狂する家具メーカーの秘密

天童木工は家具メーカーです。ただの家具メーカーではありません。顧客に「こんな座り心地のいい椅子があったのか」と言わしめる、他にはない家具を作るメーカーです。なぜ、そんな家具ができるのか? 答えは、「技術力」にあります。というか、「技術力」がすべてなのです。デザインも専門のデザイナーや建築家に任せるぐらいで、自分たちは「技術」をひたすら追求する。ここまで「技術力」オンリーになれる企業もあまりないんじゃないでしょうか。今回は「技術力」が生み出すオンリーワンパワーがテーマです。

■日本で初めて成形合板で家具を製造

創業は1940年。地元天童の建具職人や指物職人の組合として発足しました。初めは弾薬箱など軍需品を作っていた。1945年、終戦とともに家具作りを開始。そのころ3代目社長(現社長の父)が仙台の工芸指導所で初めて成形合板の技術に出会います。成形合板とは、材木を自在に曲げる技術です。厚さ1㎜のブナ材を接着剤で何枚も重ね合わせ、プレス機にかけて曲げ、電気で接着剤を固める技術です。強度も無垢材の1.7倍といいます。3代目社長は、この技術をいち早く取り入れ、日本で初めて、成形合板の家具製造を開始したのです。

■自在の形にできる。丹下健三から注文が

この技術はデザイナーや建築家を喜ばせました。彼らは自在に家具をデザインしますが、木材はその発想通りの形にはなってくれない。ところが、成形合板なら思うような形になってくれる。ここが彼らからすれば大きな魅力だったのです。そこでまず、有名な建築家の丹下健三がこれに目をつけ、1953年に愛媛県民会館の椅子1400席を発注します。これが初の大量受注でした。そのあと丹下健三は1964年国立代々木屋内総合競技場の客席も発注します。こうして公共事業で波に乗り、1990年には売上179億円に達します。成形合板の技術が大きなパワーとなったのです。

■倒産の危機で痛恨のリストラ

しかし、その技術もバブル崩壊には勝てなかったようです。179億円をピークとして売上は落ち続け、1998年には半分以下に。倒産寸前となりました。やむを得ず、45歳以上の59名をリストラ。現社長の加藤昌宏さんは当時総務部長。リストラを実行する立場にありました。断腸の思いだったといいます。そして、2001年に5代目社長に。ところが、今度は小泉政権下での公共事業大幅削減。売上は3分の1にまで落ち、さらに100人以上をリストラすることになったのです。

■会社存続は技術を残すため

もちろん、会社存続のためです。ですが、この会社存続には大きな目的があった。それが「技術を残すため」でした。ふつう会社存続はそれ自体自明なことです。しかし、天童木工ではさらに踏み込んで技術を残すことが重要でした。天童木工がつぶれてしまったら成形合板を中心とした技術も消えてなくなる。ここに強烈な危機感を持ったわけです。「そこがポイントなのか」と突っ込みたくなるかもしれませんが、でもそうなのです。実際、リストラでやめていくベテラン職人も、それで天童木工の技術が守れるなら自分はやめてもよいと語ったそうです。そこまで技術が大切だと思っている。それが天童木工の強烈な個性であり、強みなのです。

加藤さんは「「できません」とは言いたくない。それが昔からの当社の精神」と言います。ふつうならデザイナーや建築家に「ここまでならできます」というものだが、天童木工は「こんなこともできますが、どうしましょう」と言うんだそうです。デザイナーや建築家の想定をも上回るような技術力。だから、「会社は絶対潰さない。潰したら技術はそれで消えてしまう」という思いで泣く泣くリストラを断行した。でも、その経験は「技術の伝承」に生かされていると言います。「職人一人一人の力、腕、道具の使い方、これを尊重していくことが重要」。そして、「若い職人を育てていく」のだと。

■さらに技術を開発

加藤さんにとってこのリストラは痛恨の出来事でした。「もう2度と経験したくない」。これは私の推測ですが、だからこそ職人の大切さが染み渡っているのではないでしょうか。「頭だけで考えてものづくりをしようと思っても、それだけの技術が身につかなければものづくりはできない」。技術は宙をふわふわ漂っているのではない。具体的な職人という人の身について初めて実在するのです。そして、この技術力にはさらに磨きがかかっています。たとえば、杉の活用。杉は価格は10分の1。しかし、柔らかすぎてすぐ傷がつき家具では使えない。それをローラー圧密機でブナ材と同じぐらいの強度にする技術を開発。杉問題に悩む全国の自治体から引き合いが来ているんだそうです。また、塗料の開発もしています。木を使いたくない理由は「燃える、腐る、弱い」。ならば、それらの概念を反転させたい。たとえば、燃えにくい家具。また、スターバックスリザーブロースタリー東京のオープンテラスのテーブルと椅子は雨が降っても染み込まない塗料が使われているのだそうです。

■最終的な顧客価値は外部委託?

このように技術に徹底的にこだわる天童木工。でも、一般消費者の声には技術力という話は出てきません。出てくる声はたとえば、「木を新しい感覚で使っている。おしゃれ」、「包まれている感じ」、「しっくりくる」、「他にはないデザイン性」といった感じです。もちろん、成形合板の技術あっての評価だとは思うものの、ポイントはデザイン性なのです。でも、天童木工はすでに書いたように多くのデザイナーや建築家とコラボをしているのです。その数は約70人ぐらいと言います。丹下健三だけでなく、柳宗理、隈研吾、奥山清行などなど、そうそうたる人々にデザインをしてもらっているわけです。それが、成形合板の技術と相まって、「おしゃれ」とか「包まれている感じ」とか「他にはないデザイン性」といった顧客価値を生んでいる。つまり、最終的な顧客価値は(もちろん、すべてではないでしょうが)いわば外部に委託している。これはイノベーションの考え方からしたら、驚くべきことです。

【結論】デザインが外部委託でも、ずば抜けた技術力だけで顧客価値を生み出すことができる

顧客価値が一番重要なのです。顧客に評価されなければ商品やサービスには何の意味もありません。なので、顧客価値にかかわる部分こそ、自社でやらねばならない。実際に製造するのは外部に委託してもいいが、顧客価値を生む核は自社がやる、それがイノベーションの常識です。iPhoneもデザインはAppleでやって、製造は委託しています。しかし、天童木工は逆。デザインは外部委託で、製造を自分たちでやる。そして、そのための技術をこの上なく重視する。こんなやり方があるのかと驚きました。ずば抜けた技術力を持つことにより、こうしたことが可能になるのです。成形合板技術は日本初、世界でも屈指と言います。それだけの技術があると外部委託したとしても、技術力の高さがデザイン力を引き出し、顧客価値を導き出すことができるのです。「こんなこともできますが、どうしましょう」とデザイナーや建築家に言えるだけの技術力。それこそが顧客価値を創っていく。1つの斬新なイノベーションパターンだと言えるのではないでしょうか。

 

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