代表コラム 代表コラム
代表コラム

【2019年10月3日放送】[湖池屋]業界トップを追いかけない!新市場を切り拓く 新生・湖池屋の挑戦

新商品を生み出すというのは、どんな企業にとっても簡単なことではありません。たぶん、正解はない。ですが、新商品を考えていくときの源泉ということであれば、いくつかあると思います。今回はポテトチップスなどでよく知られた湖池屋ですが、現社長の佐藤章さんが3年前に社長に就任してから新しいヒット商品を次々と出してきました。そこには商品を考えていくときの源泉が3つほどあるように思いました。今回はそれがテーマです。

■革新的メーカーがただの追随メーカーに

ポテトチップスの量産化に日本で初めて成功したのが、湖池屋です。1967年のこと。お菓子は甘いものという固定観念を打ち破り、カラムーチョという辛いスナック菓子を日本で初めて出したのも湖池屋。1984年のこと。1953年創業の湖池屋は、そもそも、世の中にないものを市場に送り出してきた菓子メーカーでした。しかし、3年前に、佐藤章さん湖池屋の社長に就任したときには、その面影はすでにありませんでした。

佐藤章さんは、もともとキリンビバレッジで生茶などのヒット商品を生み出した伝説のヒットメーカー。その眼から見るとがっかりするような状況だったといいます。当時、スナック菓子業界は激しい値下げ競争のただ中にあり、湖池屋もそこに巻き込まれ、苦戦状態でした。業界第1位は何と言ってもカルビー。業界2位に甘んじていた湖池屋は、カルビーのことばかり気にしていたといいます。何とかしてカルビーについて行きたい。そういう思いだった。そのカルビーを中心に取られていた戦略が「味替え」。「何とか味」のスナック菓子を次々出してヒットを量産する戦略です。湖池屋もそれに追随。「もも味」とか「バナナ味」といったポテトチップスを出した。「味替え」でアイテムを増やして売上を作ろうとしたわけです。しかし、「もも味」も「バナナ味」も評判は散々。これが佐藤さんが直面した現実でした。

■創業者の言葉に立ち返る

湖池屋らしさを失っている。それが佐藤さんの見立てでした。どうすればいい? 佐藤さんは新たな戦い方を模索した。どんな新商品なら湖池屋らしいのか。その模索の中でたどり着いたのが、湖池屋創業者小池和夫氏の言葉でした。「ただ作ればいい、ただ売れればいい、それじゃダメだ。手掛けた以上は完全なものにする。その業界で最高のものにもっていく」。すなわち、ものづくりへのこだわりであり、品質にこだわる信念です。佐藤さんは、ここに立ち返らないと何も始まらないと思ったといいます。

菓子製造素人の佐藤さんは生産現場をまわり、議論を重ねました。その結果が、厳選した国産ジャガイモを温度を変えて3回揚げるという最高品質のポテトチップスとなった。大人向け高級路線のポテトチップス、プライドポテトです。価格は通常の1.5倍でしたが、20億円売上ればいいといわれる中で、40億円の大ヒットとなりました。これをきっかけに、「ポテトの素顔」や「ジャガイモ心地」といった素材にこだわる商品を市場に投入していきます。これにより湖池屋は再ブレークを果たすのです。

■新商品の源泉:ビジョン

原点へ帰った。そういうことなんだと思います。そもそも自分たちの会社は何を価値と考え、何にこだわってきた会社なのか。そこに立ち返る。自社のビジョンを起点とすると言ってもいいでしょう。そもそも、ビジョンは、もしこじつけでないならば、それこそが企業を駆動する根幹であるはずです。新しい価値や商品が生み出されるとしたら、ビジョンが何らかの仕方で源泉となっていなければおかしい。ビジョンを突き詰めれば、自分たちが大切にすべき価値が見えてくる。その価値が少しずつ形を成していく。そして、その極点に顧客から支持される新商品が結実するのだと思います。佐藤さんもそこへ立ち返ったんじゃないでしょうか。

■新商品の源泉:顧客

佐藤さんは新商品を考えていくうえで、他にも大切にしていることがあります。番組では、商品開発会議の様子が出ていました。若手社員による新しいスコーン企画のプレゼン。伊勢海老スコーンと和牛スコーン。40代から50代をターゲットとし、ジャンク感をなくすべく、伊勢海老や和牛を前面に出す。それに対し、佐藤さんは「それだけで、本当にターゲットの顧客に届くのか?」と問いかけます。伊勢海老や和牛だけでは顧客の心に届かないのではないか。それならたとえば、「伊勢海老 鬼殻焼き」としたらどうかと逆提案。鬼殻焼きとは文字通り伊勢海老を焼くのですが、これだと臭いまで立ち登ってくる。それが顧客の連想を掻き立て、心に届くのだ、と。

番組では、佐藤さんが40年通っているという中華料理屋での食事風景が出てきます。いつもの肉あんかけのチャーハンを食べながら、この味は後に残るんだと言います。つまり味が印象付けられるわけです。「どうやって印象的な味にするか。そこが難しい」。顧客の印象に残らないようでは、食品としては価値がないも同然でしょう。顧客の味覚に、心に刻印されるような味。そこに価値があるということでしょう。

ここでの源泉は顧客なんだと思います。名前を見ただけで顧客の心に届き、食べてみて記憶に刻印される。顧客が何を感じ、何を心に刻むか。そこが考え抜かれなければ価値ある商品にはなり得ません。伝説のヒットメーカー佐藤さんにとって、顧客は商品価値の一貫した源泉なんだと思います。

■新商品の源泉:人と組織

番組を見る限り、新商品の源泉はもうひとつありました。佐藤さんは社員に「世の中にあるスナック菓子100種類を食べて、新しいスナック菓子のアイデアを出す」という課題を与えました。ですが、この課題には実は裏がありました。本当に良いアイデアを出してほしかったのではなかったのです。むしろ、佐藤さんは、その課題を解こうと苦闘する中で「世の中のスナック菓子を100種類見ても新しいスナック菓子はできない」ということを社員に体験してほしかったのです。そんなことをしても、似たものしか出てこない。それではダメ。「見たことのないもの」「既視感のないも」をどう作るか。そこを考えなければならないのだ、と。

では、どうすればいいか? 佐藤さんは「多少つじつまが合わなくても、自分らしいものを生み出そう」と言います。周りを見るのではなく、自分を見る。これは、自分が本当に価値ありと思うものを信じて作る出していくということではないかと思います。人に囚われてはいけない。「見たことのないもの」は自分の中から生まれてくるのだ、と。そして、それはさらに組織にまで広がります。自分の中から価値あるものを生み出す、そういう「主人公」は、新商品ごとに毎回変わるのが良い組織なのだと佐藤さんは言います。そして、いろいろな人が「自分の価値」を出し合って、ぶつけていくところに本当に良いものが生まれるのだ、と。「異種格闘技。変なチームの方が仕事は何倍も面白くなる」。これは、価値の源泉は、人であり、組織であるということでしょう。

【結論】新商品はうわべの目新しさではなく地に根を張った源泉から考える

こうして新商品の3つの源泉に気づくことができます。ビジョン、顧客、人と組織です。新たな商品と付加価値を考えていくとき、確かにこの3つは欠くことのできいない源泉です。そして、あらためてこうした源泉を起点にして考えていくことが何より重要なのだと思います。単にうわべの目新しさや目先の新規さでいろいろ思いつきを並べるのではなく、こうした源泉に基づき、しっかりと地に根を張ったところから発想していくことは、本当に顧客に支持される付加価値を生み出すうえで必須ではないでしょうか。湖池屋もそれで復活したんではないか。そう思いました。

 

[関連記事]

【2019年9月26日放送】[麹町中学校]宿題・定期テストは廃止! 教育の常識を打ち破った 驚き公立中学の秘密

【2019年9月19日放送】[カイハラ]世界が認めるメード・イン・ジャパン 失敗から宝を生み出す地方メーカー

【2019年9月12日放送】[能作]錫100%の技術力と魅惑のデザインで客を魅了。下請け鋳物工場が世界に羽ばたいた秘密!

【2019年9月3日放送】[亀田メディカルセンター]とことん患者目線で常に進化!人気病院”亀田”の革新経営の全貌

【2019年8月29日放送】[オイシックス]おいしい野菜宅配トップ3が大連合!~顧客調査で急成長する食卓革命の全貌~