代表コラム 代表コラム
代表コラム

【2019年8月29日放送】[オイシックス]おいしい野菜宅配トップ3が大連合!~顧客調査で急成長する食卓革命の全貌~

起業の条件は? 今回のオイシックスはその答えを明確に示しているように思います。私はかねがね起業と独立は区別して考えるべきだと思ってきました。独立は、大手旅行会社に勤めていた人が自分で小さな旅行会社を始めるといった感じ。一定の差別化は必要なものの、事業内容は既存のものになります。これに対し、起業は、世の中にいまないものを生み出すこと。なので、事業内容は全く新たなものになります。独立と起業のどちらがいいかといったことではなく、やり方が全然違うということが言いたいのです。この点で、起業の条件というものが存在しているはずです。オイシックスは典型的な形でその条件を教えてくれます。これが今回のテーマです。

■ネット通販をやるなら、一番難しい野菜を

オイシックスは有名なので、よく知られていると思いますが、食のネット通販をやっている会社です。たとえば、キットオイシックス。野菜はカット済み、調味料付きで、それらがパックされている。家庭で調理して、2品を20分ぐらい。楽しくできたてのご飯ができるわけです。子供を迎えに行って帰ってきてすぐご飯を作るといった共働き夫婦の世代にはピッタリです。

とこんな感じなのですが、創業は2000年。まだネット通販草創期。社長の高島宏平さんがネット通販をやるなら一番難しい野菜をやろうと立ち上げたとのことです。高島さんは起業前スーパーに行き、お客をつかまえてはなぜこのスーパーに来るのか聞き取りをしたんだそうです。すると「野菜がいいから」という声が多かった。そこで、「良い野菜を自宅に届ければ喜んでもらえる」と考え、オイシックスを始めた。

■「こんなに大変だとわかっていたら、やらなかった」

では、どれだけ先行きを見通せていたのか? どうも、明確な見通しはなかったようです。「こんなに大変だとわかっていたら、やらなかった」という言葉からも、それはうかがえます。まず、農家を回ったんだそうです。しかし、当時インターネットを知っている農家がそもそもあまりなかった。ほとんど相手にされなかったということです。中には「うちの土はいいんだ、食べてみろ」と言われて、土を食べることまでした。さらに運ぶのも大変。新鮮な野菜をどうやって家庭にまで届けるのか。野菜のネット通販は、売るのも買うのも運ぶのも大変ということが、やる中で分かってきたわけです。

■起業の条件1:見通せないことをあえてやる

こんなに先のことも見えていない状態で起業したのは、高島さんがいい加減だったからでしょうか。もちろん、そんなことはない。これは起業というものの本質と考えるべきでしょう。起業は、いま世の中にないものを生み出そうとすることです。なので、厳密に言えば、前例はありません。とすれば、先のことは誰にも分らないのです。文字通り、やってみなければわからない。これは調査不足などという問題ではなく、起業に伴う避けがたい事態なのです。

起業は訳のわからない混沌に直面して、そこにあえて踏み出そうとしているようなものです。見通しがあり、計画があり、着実に歩んでいくなどということは望みえない。見通しなく、よって計画を作り得ず、よって右往左往しながら進むということが避けられないのです。先が見えない濃霧の中を全速力で走り抜けようとするようなこうした非合理さ、無謀さ、バカさを何ほどか持っていないと起業はムリでしょう。もちろん、見えるところは見通す必要があるし、抑えられるリスクは抑えるべきです。しかし、それには限度がある。最後、どこかで濃霧を突っ切るリスクをとらねばなりません。「何を考えてるの?」と言われるような愚行をあえて敢行できるかどうか。これが、起業の第1の条件でしょう。

■起業の条件2:地に根を張ったビジョン

では、それほど大変だった事業を高島さんはなぜ続けることができたのでしょう? 「食の流通に革命を起こす、その一心だった」というのが高島さんの答えです。高島さんたちのビジョンは「より良い食の未来をつくっていく」ということ。「株式会社の形を通して食の社会問題を解いていく」。こうした思いが最初からあるわけです。「株式会社の形を通して」というのは、株式会社の形はとっているが、本来NPOのような非営利活動が目指すような目的を追求していく、ということなんだと思います。そういうどうしても成し遂げたい思いがあったわけです。

企業理念なるものは今どきどの企業にもあるでしょう。しかし、本当に苦しいときに根源から支えてくれるような理念かどうか、そこが問題になる。本当に困難であれば、場合によっては続けられなくもなるでしょう。しかし、そこを支えてこそ、「ビジョン」なのです。事業継続において最も重要なものの一つは、こうした地に根を張ったような「ビジョン」でしょう。人の中に潜むこうした強い思い、これが起業の第2の条件だと思います。

■起業の条件3:顧客の言語化されていないニーズをつかむ

では、こうした社会の課題を解決したいという思いは、最終的にはどこに向かっていくのでしょうか? 言うまでもありません。顧客です。この点、オイシックスは徹底している。顧客の声を聞くという姿勢が半端ではないのです。まず、新サービスについて試食会をする。お客さんに来てもらい、実際に食べてもらう。食べやすいかどうかなど、丹念に聞き取ります。たとえば、小松菜が食べにくいとなると、何センチに切るかを徹底検討するわけです。次に、新しいアイデアや企画については顧客に意見を聞く。そんな聞き取りの中で、たとえば、「冷凍庫の空きとの相談になるので、配達の量が事前に分かるようにしてほしい」といったこれまで思いつかなかった顧客の本音を聞けるわけです。さらに、これは社長の高島さん自らが出向いていましたが、利用者宅を訪問しインタビューする。たとえば、オイシックスをやめようと思ったことはないかと聞く。「あります」。「どんなときですか?」「月4万円を超えたとき。同じものをスーパーで買った方が安かったんじゃないかと」。「そのとき500円のポイントが付くとしたら、それってどうでもいいことですか?」「それは、どうでもよくはないです」。そんな感じで直接聞き取るわけです。高島さんは「発見がないことなど、1度もない」といいます。

ポイントは、顧客の声を聞きながら、言葉になっていないことを感じ取ることだと言います。「顧客は「短い時間で」と言うが、実は言葉になっていない中でより高い価値を求めている。たとえば、子供が今までより多く食べるようになるとか、料理が上手になるとか、野菜の種類が多くとれるとか」。言葉にならない潜在的な思いをインタビューを通して言語化することこそが顧客の声を聞くことなわけです。これは、起業にとって実に重要です。世の中にないものを生み出そうとする以上、そのニーズは顧客にさえわかりません。まだ世の中にないのですから。いまないものについて顧客に直接聞こうとしても無意味なのです。むしろ、顧客がふつうに言語化できる言葉の向こうにある言語化されていないものこそが、起業の源泉になるのです。この顧客の言語化されていないニーズをつかむことが、起業の第3の条件だと思います。

【結論】この3つは起業の決定的な条件

以上、オイシックスの活動から、起業の条件として「見通せないことをあえてやる」「地に根を張ったビジョン」「顧客の言語化されていないニーズをつかむ」の3つを上げました。起業の条件としてはもちろんこれだけではないでしょうが、この3つはやはり決定的な条件だと思います。起業と言っても、ベンチャー企業だけではありません。既存企業も新しい事業に挑戦しようとするときには全く同じことが言えるでしょう。「言語化されていないニーズ」ということでiPhoneを思い出したのですが、そういえばスティーブジョブズはスタンフォード大学卒業式での講演で「Stay foolish」と言っていました。やはり共通するんだと思います。

 

[関連記事]

【2019年8月22日放送】[東亜工業]餃子ブーム!陰で支える町工場の「餃子革命」

【2019年8月15日放送】[満寿屋]十勝産の食材で農家と共存!地域密着型のパン屋さん

【2019年8月8日放送】[オンデーズ]倒産危機から奇跡の復活!メガネ業界の風雲児 不死鳥伝説

【2019年8月1日放送】[ロゴスコーポレーション]”簡単・便利”でファン殺到!初心者が熱愛するアウトドアメーカーの秘密

【2019年7月18日放送】[五の池小屋]絶景&美味「来たれ!夏山スペシャル」~続々!ヤマに新たな客を呼び込む男たち~