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【2019年7月11日放送】[ヤタローグループ]ビジネスに永遠はない!変幻自在で挑む 大胆サバイバル戦略

経営はビジョンだ、戦略だ、イノベーションだといろいろ言われます。もちろん、その通りでしょう。ですが、今回紹介するヤタローグループを見ると、その前提となるもっと根本的な次元があるように感じます。それは「生き残り」です。言葉は悪いですが、企業経営には泥の中を這いずり回るような部分がどうしてもあるんじゃないかと思うのです。そこでは、戦略とか整然とした理論は通用せず、生き残るためにもがき続ける以外ない。そして、その中から生立ってくるビジョン的なものだけが本当に生きた力になるんじゃないか。企業経営はやはり生き残りをかけた戦いであると言わざるを得ません。今回はそういう次元のお話です。

■痛切なる体験

ヤタローグループは1933年に浜松市でパンメーカーとして創業しました。順調に成長し、地元の有力企業になりました。現代表の中村伸宏さんが入社したのが1971年。1987年からはドイツ式パン店のシャンボールを開店。静岡県内に50店舗を展開するまでになりました。しかし、ここから中村さんは痛切な体験をすることになります。90年代後半に入って大型スーパーやコンビニが進出してきたのです。これにより、赤字転落。シャンボールも店舗数半減と縮小を余儀なくされます。

■大手がやれないことをやる

この体験がきわめて重大な意味を持ったことは中村さんの様々な発言からも十分にうかがわれます。「大手が来ないところ、大手がやれないこと、やりたがらないことをやる。負ける戦争はしない。人のまねをしてもしょうがない」。さらに驚いたのは、大手に対してローカル企業が生き残るにはどうしたらいいかという問いに対する答えです。「現在まで生き残っているローカル企業は特殊は技術や商品、先祖伝来の蓄積がある老舗で、プライドを持っている。それを捨てること。粋がって大手とけんかしないこと」。特殊な技術や商品、先祖伝来の蓄積を武器に戦え、と言うのかと思ったら、真逆。それを捨てろというのです。で。どうするべきなのか。「大手も次第にニッチに出てくる。そこで、より遠いところ、手の届かないところに行くようにしなければならない」。何か本当に徹底していますよね。でも、生き残るとはそういうこと。生き残らなければ意味がない。生き残るという一点をめがけて、ともかく大手の手の届かないところに行く。自社の「強み」がその役に立たないなら、それも捨てるべきなのです。

■300年続く企業に

中村さんの目標は「300年」です。「300年を目標に長く続く組織をつくることが会社の継続になる」。生き残ること、存続すること、続くことこそが目標。100年企業とはよく言われますが、中村さんの目標は300年です。生き残ることにどれだけ経営を集中させているか、ここからもうかがわれます。

■大手には作れないバームクーヘン

そんな苦境の中で2000年から開発を始めたのがバームクーヘンでした。なぜか? バームクーヘンは機械化が難しく、大手も手を出さないからです。パサパサなバームクーヘンがふつうという中で「究極のしっとり感」を目指し、何と試作品を1万本。生と焼きすぎの中間が難しいんだそうです。この執念も大手がやれないことという思いが背後にあったからと思われます。バームクーヘンは一本一本職人技で焼く以外ない。それで本当においしいバームクーヘンが作れたから大手は手が出ない。大量生産を宿命づけられた大手に対して、ローカル企業は手をかけて丁寧に作ることができるのです。大手にできないということの中には、大量生産品にはないこの品質の高さも含まれるのだと思われます。中村さんは「味ではない」とさえ言います。「幸せを届けたいと思っている」と。

■「人」中心の多角化

しかし、そんなヤタローグループですが、実は多角化をやっているんですね。どうも初めから明確な戦略があったのではなさそうです。頼まれるからやるとのことです。この事業、跡を継いでもらえないだろうか、協力してやってもらえないだろうか、と頼まれる。中村さんは頼まれ仕事の方が燃えるんだそうです。こうして手掛けている事業は、宿泊施設、レストラン、病院食、学校給食、大学の学食、青果、観光案内、老人福祉センターと多岐にわたるのです。やっている事業に統一性がないように見えますが、実は共通することがある。「お互い一緒にやろうと共感した人たちとやる」。人なんですね。

こうした多角的な事業を進める原動力は何か? やはり人材だと言います。ヤタローグループにはサービス事業本部という部署があって、そこが頼まれ仕事を推進する。ここは中途採用の人ばかりなのだそうです。前の会社がつぶれた人、早期退職した人などなど。こうした人材が活躍する。たとえば、ある人が担当して、以前市の研修施設だったところを人気の宿泊施設によみがえらせた。サービスを徹底し、自然体験教室やヨガ教室など年間70回ものイベントを行い、料理長を新たに招いて、家族で楽しめる場にした。あるいは、他の担当者は市の観光案内所を地元農家370軒と契約して野菜の直販所にし、年間の来場者数を3倍にした。さらにその契約を生かして農業バルという地産地消のレストランまで立ち上げた。

■「失敗した人」「苦労した人」が重要

中村さんは「自分はクリエイティブではない。現象を見ていろいろなものを察知し、人を組み合わせるのが私の仕事だ」と言います。そして、「中途採用の人たちは、自分の給料は自分で稼ぐという気概を持っている。「失敗した人」「苦労した人」が財産。それが300年続くための原点。人材が企業力」と。ここにも300年続けるためのリアリズムがあります。スキルとかコンピテンシーとか、そういうこと以上に、「失敗した人」「苦労した人」が重要なのだ、と。経営もビジネスも厳しいものです。時には失敗もし、大変な苦労も強いられる。でも、そうした次元で何かを掴んだ人こそが、地に足を着いて何かをやり遂げることができる。そういうことじゃないでしょうか。

【結論】地べたを這うリアリズム

ヤタローグループには経営のリアリズムとでも言うべきものが強く感じられます。経営は中期経営計画を立てたからって、どうなるものでもない。とにかく、大手のできないことを徹底的に探し、地べたを這う感覚をもった人たちと共感し一緒にやっていく。そういう苦闘の中にだけ経営というものはあるのだということを感じました。「形あるものは、いつかは壊れる」というのが中村さんの口癖だそうです。不断の崩壊と戦うときの武器は、地べたを這うリアリズム以外にはないじゃないでしょうか。

 

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