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【2019年7月4日放送】[テルモ]北里柴三郎のDNAで売り上げ急拡大 驚異の技術力と熱意で医療に革命を!

今回はあの医療機器のテルモです。番組を通してテルモがイノベーティブな企業であることをあらためて知ったわけですが、その背後にあるのは企業理念ではないかと感じました。企業理念が重要であるとは、以前からずっと言われ続けてきたように思います。いまどき、企業理念のない会社を探す方がはるかに難しいでしょう。ですが、重要と言われている割には、企業理念が本当に力になっている企業がどれだけあるのか? そんな疑問も感じます。しかし、テルモの場合は違うようです。企業理念がイノベーションの原動力に本当になっている。では、なぜそうなるのか? そのあたりが、今回のテーマです。

■イノベーションの原動力は何なのか?

番組はカテーテルの話から始まりました。カテーテルって、ものすごく進化しているんですね。以前は、足の血管から入れていたのを、いまは手の血管から入れる。足の血管は太く、出血の処理も大変で、患者の負担が大きかったんだそうです。ところが、手からだと容易に心臓まで届き、場合によっては20分ぐらいで手術が終わり、患者の負担が圧倒的に軽い。カテーテルを心臓まで届けるガイドワイヤーが水分に触れるとウナギのようにヌルヌルになるという技術が、安全に血管の中を通すのに大きく貢献したんだそうです。それだけではありません。最近ではカテーテルを肝臓にまで届け、治療することができるようになってきているとのことで、登場したある医師は「カテーテルであらゆる血管の病気を治せるようになってきています」と言っていました。

こうしたイノベーティブな技術を開発し、商品化しているのがテルモなのです。こういうイノベーティブな企業に接するとき私がいつも思うのは、その原動力は何なのだろう、ということです。なぜなら、イノベーションを起こすというのはそんな簡単なことじゃないからです。日本企業はあまりイノベーションが得意ではなく、新しいものを生み出せずに停滞しているケースが多いと言われることがありますが、そんな中でどんどんと新しい商品を生み出せるのは、いったいなぜなんだろう。そこを掴むことは、多くの企業に参考になるのではないでしょうか。

■医師が立ち上げた、だから「医療を通じて社会に貢献する」

テルモの場合、企業理念こそが、その原動力になっていると感じました。実際、番組でも企業理念について強調されていました。テルモの創業は1921年。1914年に勃発した第1次世界大戦をきっかけに日本に体温計が入らなくなりました。当時は体温計は輸入に頼っており、医師たちにとっては大問題でした。そこであの近代医学の父と呼ばれる北里柴三郎らが発起人となって体温計メーカーを立ち上げた。これがテルモの始まりです。つまり、企業家が立ち上げたんじゃないんですね。医師が医師の活動のために立ち上げた会社だったんです。ここから「医療を通じて社会に貢献する」というテルモの企業理念が生まれます。この理念を、企業家が言っているんじゃない、医師たち自身が言っているんだという目で見てください。その本気度が容易に伝わってくるんじゃないでしょうか。

■企業理念が死ねば企業は滅びる

さらに興味深かったのは現在の社長、佐藤慎次郎さんの経験です。佐藤さんはテルモに入る前、あの世界的な会計事務所、アーサーアンダーセンにいました。よく知られているように、アーサーアンダーセンはあのエンロン事件で不正会計に関与したとして解体を余儀なくされます。当時、佐藤さんは入社して2年。巨大組織が崩壊していき、9万人の社員がバラバラになっていく様をつぶさに経験しました。この事件についてジャック・ウェルチは『ウイニング勝利の経営』の中で「企業の使命と社員の行動に一貫性がなくなったとき企業は滅びる」と書いた。この言葉を引いて佐藤さんは、創業当時の理念を忘れて利益誘導に走ってしまうことの恐ろしさを述懐していました。

■企業理念はきれいごとではないという危機感

佐藤さんが理念について言っていたことの中で決定的だなと感じたのは「きれいごとではない」という言葉です。企業理念と言えば、えてして取って付けたようなものになりがちです。きれいな言葉を並べてお茶を濁すようなこともあるでしょう。しかし、テルモの場合、企業理念は存続の危機感と直結しています。テルモは25,000人の社員がいます。この25,000人が道を踏み外さないよう組織を導いていくのは、並大抵のことではないという危機感が、佐藤さんにはあるように見えました。「25,000人の社員に設立の精神や本来あるべき行動を常に言い続け、企業の価値観を思い起こす瞬間を設け続けない限り、リスクは増していくと思います」。一歩間違えれば、本当に組織は崩壊するかもしれない。この危機感から、企業理念は生命力を得る。本当にきれいごとではすまないのです。

たとえば、アフリカで輸血用の血液に潜むマラリア原虫を抑える機器を作っているアメリカのカリディアンBTCを買収するときも、いろいろ迷った末、最後に決め手になったのは企業理念の一致だったと言います。2000億円の買収です。それだけのお金を動かす原動力になるのも、企業理念だったわけです。

■次々に生まれるイノベーション

こうしてテルモはリアリティある企業理念と強い使命感で次々とイノベーションを起こしてきました。1963年、注射器の使いまわしが当たり前であった時代に、感染症を問題視し、使いきり注射器をいち早く導入しました。1982年には肺手術に不可欠な人工肺の小型化に世界で初めて成功しました。2005年には糖尿病の子供たちのために痛くない注射針を開発しました。1日5回のインシュリン注射の辛さから子供たちを解放するため、極細の注射針を開発し、痛みをなくしたのです。

さらに、自社開発だけにこだわっているわけではありません。上に取り上げたマラリア原虫を抑える機器「ミラソル」は、アフリカで安全な輸血用血液を供給することを可能にし、多くの人々の健康に貢献しようとしています。また、ある海外メーカーと販売契約を結び、持続血糖測定器を売ろうとしています。これはお腹にセンサーを貼るだけで常時血糖値が図れるというもので、血をとることが全く必要なくなりました。このように「医療を通じて社会に貢献する」ためなら、他社製品であっても取り入れていく。ここにテルモの姿勢が現れているんじゃないかと思います。

【結論】企業理念はイノベーションを生む強力なパワーになる

私は、イノベーションの起点は、ビジョン起点、顧客起点、技術起点の3つがあると思っていますが、テルモの場合、ビジョン起点の典型例と言えるでしょう。企業理念をお題目のようなものだと思っている人もいるかもしれません。あるいは、そこまでいかなくても、日々の仕事でそれほど意識しないという人も少なくないかもしれません。しかし、企業理念が危機感と結びつき、深いリアリティを持つとき、それは企業をイノベーションに駆り立てる強力なパワーになる。企業理念の本気度がイノベーションを生み出す。テルモはそのことを示している。イノベーションの停滞を考えるとき、あらためて企業理念の巨大なパワーを顧みる必要があるのではないかと思いました。

 

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